2011/08/10

ロンドン暴動で思うこと

ロンドンで暴動が頻発しています。マシューと私が住んでいる所は富裕層地域なので平和そのものですが(ほとんどのお店にシャッターが下りてて異様な雰囲気だけど)、ちょっと外側に出るとリアルヘルシング状態で恐ろしいです。

今回の暴動の大元の原因は警官が犯罪者を射殺したから。でも何で殺されたのかがはっきりしなくて、それに腹を立てた人権団体が「真実を明らかにしろ!人種差別をするな!」と騒ぎだしたのがスタート。そしてこの人たちにchavがおもしろ半分の略奪目的で加わって、こんな大事になってます。多分3日目以降の暴動はこのchavが首謀のものばかりなんじゃないかな。みんな「若者」というよりほとんど「子供」です。冗談でなく小学生くらいの年齢の子も参加してます。

今回の暴動ではこの「chav」という存在がキーポイントなのですが、Space ALCにわかりやすい解説が載ってました。

chav; 〈英・侮蔑的〉チャブ◆2004年に流行した言葉。教養レベルが低く、不作法で、独特の服装でショッピングセンターなどをたむろしている若者たち。典型的 な外見は、男性の場合、安っぽい金ぴかのアクセサリー、バーバリーチェックのキャップ帽、フード付きトレーナー、ジーンズまたはジャージ、白いスニー カー。女性の場合、ミニスカート、スチレットヒール(stiletto heel)、金色の大きなイヤリング。

「ヤンキー」とはまた違う存在で、一番近いのは「ニート」です。でも日本の内弁慶タイプなニートと違い、外にガンガン出かけてて非常にアグレッシブです。お約束のように「貧困層が」「移民が」との意見も出てますが、今回の暴動の主人公は何も深く考えずに、「面白そうだから」で参加したchavがほとんどというのが本質だと思います。Tottenham暴動に参加した子の映像は明らかに、たまにクスリやったりするけど基本的にはほとんど無害というタイプのただのギャルだったし。

今回の暴動パンデミックの分析には時間がかかりそうです。でも各地に飛び火した暴動は、ただの流行です。祭に参加した程度の意識でしょう。BBCでは「アメリカ拳銃文化」「ギャングスタ礼讃」を理由に挙げている人がいましたが、みんな何も主張したいことは無いんです。参考にchavへのインタビューの数例です。

"It was madness! It was good though, good fun...got a couple of free things"
(とち狂ってたよ!おもしろかったけどね、いっぱい戦利品(盗品)もゲットしたし。)

 "It's the government's fault, I dunno. Yeah, whoeva it is, I dunno"
(政府のせいだよ、多分。誰だかわかんないけど、誰かのせい。)

"It's the rich people...We're just showing the rich people we can do what we want"
(金持ちが悪い。自分達は金持ちに何でもできるんだってことを示してるだけ。)

「彼らにチャンスが無い社会のせい」と言う人もいます。日本も同じですが、確かに今のイギリスは貧困層に生まれ育った若者には非常に厳しい状況です。でも人生が不平等なのは、どの国でも、いつでも一緒。理想論かもしれないけど、チャンスは作ろうと思えば作れるんです。「貧乏すぎて高校に行けない。だから盗む。」とか言ってるアホがいましたが、それなら暴動に参加するエネルギーをアルバイトに回せよと心底思う。最初から努力もせずに、何でもかんでも人のせい、自分の人生が終わってるのは社会のせい、そんなくだらない持論しか言えない犯罪者を「なら仕方ないよね。どんどん盗って下さい」と受け入れるほど、人生は甘くないんです。「力を貸して」というのなら、暴力ではなく頭を使えよ。社会という共同体を共に護り育てるという義務を放棄して、「平等に扱え」という権利だけ要求するのは、言い方がきついですが寄生虫と同じです。

今回の騒動を革命のように捉えている人もいることに驚きました。そんなわけないやん。今回の騒動の被害者は中流層ばかりです。今のイギリス中流層というのは、移民・もしくはかつての労働者階級で、仕事がない田舎からでて来て、知識産業やサービス業で真面目に働いてのし上がった人達が大勢です。そんな人たちの努力を踏みにじる、単なる強盗・強奪を「社会が変わるために必要」と崇高な行為のように呼ぶ人もアホ。「犯罪」と「革命」は全く別物です。

移民の一人として言いますが、「格差社会が」だの「移民が」だの「貧困層が」だの知ったか顔で語る人、迷惑です。貧困者も、マイナーな人種も、同性愛者も、移民も、差別と戦って汗を流して英国の階級社会で生きてるんです。今回の暴動に参加してるような連中と簡単に一緒にしないで下さい。

個人的には今回の大元の事件に対しては、「お尋ね者の犯罪者が撃たれたんですか。何したか知らないけど、撃たれるくらいだからよっぽどでしょ。」としか思ってないのですが、それをただ受容せずに抗議活動が行われるのがイギリスのいいところです。そういう人権意識は素晴らしいです。だからこそ、その尻馬に乗って暴れた連中は許せない。

参加している連中には扇動する者もいなければ、主張もない。まさに彼らの行動は、ただひたすら「暴力」という「流行」を追っているだけの愚行です。 何しろ彼らには何も要求がないのですから、話し合いも説得もできるわけがない。今回の暴動は、まったくポリシーもなければ義もありません。人権団体の気持ちを踏みにじり、一般市民の職場を破壊し、一般市民から略奪し、一般市民が困ることしかしていません。彼らが主張する原因(笑)のはずの富裕層は全くダメージ無しです。彼らは集団で暴力行為を行う「快楽」を追求しているだけです。猿以下ですな。

今回イギリスで暴動を起こしている連中に共鳴する声が極めて少ないのは、この手の連中の暴力にずっとみんな腹を据えかねてたから。彼らは弱者しか狙わないんです。なので連中に対して同情的な雰囲気は皆無です。本来ならば「彼らの気持ちがわかる」はずの人々が首をかしげてるんだから、まあそう長くは続かないでしょう。基本ローカルで暴れるだけだし(やつらはテリトリー外が怖いのだ、チキンめ)。

そういうわけでイギリスの負の部分をまざまざと見せ付けられた今回の騒動ですが、暴動の後片付けを自発的に行うボランティア(Riot Clean Up) に有り余るほどの参加者がいたり、夜中見回りをしている警官に紅茶を差し入れしたり、暴徒の写真をネットに載せて逮捕に協力(Catch A Looter)したりと、イギリスには善い人がも多く存在しているのも事実です。

こういう部分がもっと世界で報道されるべきだと思うし、一刻も早く騒動が収束に向かうことを心から願います。